2020年度

研究成果

2020年度


 

マルチスケール解析グループ

田中 敬二グループ

プレ硬化温度の異なるエポキシ硬化物について、架橋密度が同じになるようにポスト硬化処理を施し、誘電緩和と動的粘弾性測定により不均一性を調べた結果、プレ硬化温度が高いほど不均一性が大きくなり、破壊靭性が低下することを明らかにした[1]。また、大きさの異なるエポキシとアミンを混合したエポキシ樹脂について、銅界面における濃度プロファイルを分子動力学(MD)計算により調べた結果、小さい分子がエントロピー駆動により選択的に界面に偏析することが分かった[2]。固体基板上に孤立して存在する高分子鎖が、熱処理とともにその形態を変化させ吸着していく様子を直接観察することに成功した[3]。従来は分光学的なデータから高分子鎖の吸着現象を議論していたが、本研究では原子間力顕微鏡を用いて「直接観察」するとともに、分子動力学計算により形態変化がコンフォメーション転移であることを明らかにした。

関連論文

  1. Aoki, M.; Shundo, A.; Yamamoto, S.; Tanaka, K. Effect of a Heterogeneous Network on Glass Transition Dynamics and Solvent Crack Behavior of Epoxy Resins. Soft Matter 2020, 16, 7470-7478.
  2. Yamamoto, S.; Tanaka, K. Entropy-Driven Segregation in Epoxy-Amine Systems at a Copper Interface. Soft Matter 2021. 17, 1359-1367.
  3. Oda, Y.; Kawaguchi, D.; Morimitsu, Y.; Yamamoto, S.; Tanaka, K. Direct Observation of Morphological Transition for an Adsorbed Single Polymer Chain. Sci. Rep. 2020, 10, 20914.

西野 孝 グループ

高分子接着界面のナノラマン散乱による解析

ラマン分光での熱圧着時の界面の構造変化評価や微細領域での分子構造の評価のための解析法を確立させ,多様な界面評価手法を組み合わせて多角的に解析した。難接着性樹脂であるアイソタクチックポリプロピレン(it.PP)を基板にし,ポリオレフィン系ホットメルト接着剤との接着界面を,顕微ラマン分光に加え,X線コンピュータトモグラフィ(CT)や原子間力顕微鏡(AFM)といった多様な手法によって,界面厚みを解析した。接着強度と界面厚みは良い相関を示すことを明らかにするとともに,基板の結晶化度の変化によっても,接着強度が制御可能であることを見出した。

初井 宇記 グループ

接着界面を可視化する軟X線顕微鏡の開発

力学特性に関する接着界面の化学状態の役割を明らかにするための低損傷放射光顕微X線分光法の新規開発を行っている。高分子はX線ナノビームにより容易に損傷される。そこで、蛍光X線と2次電子を高効率に検出できる新規検出方法と界面信号を強調して取得できる顕微光学系を開発し、低損傷放射光顕微X線分光法として統合させる。これまでに試作機の開発に成功し[1]、顕微鏡面でサブミクロン解像度が得られ、接着界面の破壊に関する化学的な知見を得ることができた。接着面の解析のためには、試作機の空間分解能は十分でない。より高い空間分解能を高分子系で得るための実用機について開発を進めてきており、1.9 keVにおいて設計空間分解能と同等の150 nm分解能を得るに至った。今後調整を進め600 eV近傍の空間分解能(設計分解能30 nm)の確認を進める。

関連論文

  1. Oura, M.; Ishihara, T.; Osawa, H.; Yamane, H.; Hatsui, T.; Ishikawa, T. Development of a Scanning Soft X-ray Spectromicroscope to Investigate Local Electronic Structures on Surfaces and Interfaces of Advanced Materials under Conditions Ranging from Low-Vacuum to Helium Atmosphere. J. Synchrotron Rad. 2020, 27, 664-674.

中嶋 健 グループ

エポキシ/フィラー界面のナノメカニクス評価

振幅・周波数変調型原子間力顕微鏡(AM-FM AFM)を用いて、エポキシ接着剤と異種材料との界面領域の力学特性を高空間分解能で評価した[1]。 直径50 nmのシリカナノフィラーをエポキシネットワークに添加したエポキシ ナノコンポジットをAM-FM AFMによって観察したところ、フィラーを取り囲む界面層の存在が明らかになった。数十ナノメートルの厚さのこの層は,エポキシマトリックスよりも相対的に低い弾性率を示し、フィラーの界面付近で硬化反応が抑制されていることがわかった。

関連論文

  1. Nguyen, H. K.; Aoki, M.; Liang, X.; Yamamoto, S.; Tanaka, K.; Nakajima, K. Development of local mechanical heterogeneities in a cured epoxy network revealed by bimodal dynamic force microscopy. 3rd G’L’owing Polymer Symposium in KANTO (GPS-K 2020), 2020.

山田 淳 グループ

電子顕微鏡を用いた接着界面の構造評価

スピンコート法を用いてシリカナノ粒子が分散したエポキシナノコンポジット薄膜を作製し,透過電子顕微鏡内で薄膜の引張挙動を観測した。引張り幅を広げてゆくと、薄膜の端から亀裂が発生し、膜内を進展した。亀裂の先端がシリカナノ粒子に遭遇すると,進展が一時的に停止し新しい亀裂形成へと移行した。さらに別のシリカナノ粒子に遭遇すると、同様の挙動を繰り返して亀裂が大きくなっていく様子が観測された。亀裂進展に伴う薄膜の伸長挙動を解析した。すなわち、引張開始から2分20秒後(a)と3分30秒後(b)におけるTEM像を比較し、亀裂先端部から離れた7か所の2粒子間距離(A~G)の変化を測定し、ひずみ速度を算出した(c)。亀裂近傍ではひずみ速度は大きく,離れるほど小さくなった。また、亀裂先端近傍では,シリカナノ粒子とエポキシとの剥離によるナノサイズのボイドも多く観察されたことから,フィラー粒子の存在はピン止め効果に加え,界面を剥離させることで応力を分散させる効果も担っていると考えられる。亀裂先端近傍の力学特性分布や破壊靭性向上の機構について解析を進めた。

青木 裕之 グループ

中性子反射率トモグラフィーの開発と接着界面の構造評価への応用

中性子反射率法はバルク内部に埋もれた界面のオングストローム〜サブμmスケールの構造評価を行う有力な手法である。これを接着技術開発における界面構造評価に応用するための測定計の高度化を行うとともに、接着界面の構造解析を行っている。広い温度・湿度環境下(5〜85℃、0〜85%RH)における接着界面の中性子反射率測定を可能にするシステムを開発するとともに[1]、不均一な界面に対しても局所的な中性子反射率解析を可能にするトモグラフィー法(空間分解能 < 0.6 mm)を開発した。このような手法を用いることで、高湿度環境中で高分子膜中に吸収した水分子が接着界面に凝集する過程を明らかにした。

関連論文

  1. Arima-Osonoi, H.; Miyata, N.; Yoshida, T.; Kasai, S.; Ohuchi, K.; Zhang, S.; Miyazaki, T.;, Aoki, H. Gas-flow humidity control system for neutron reflectivity measurements. Rev. Sci. Instrum. 2020, 91, 104103.
  2. Aoki, H.; Ogawa, H.; Takenaka, M. Neutron Reflectometry Tomography for Imaging and Depth Structure Analysis of Thin Films with In-Plane Inhomogeneity. Langmuir 2021, 37, 196-203.

堀内 伸 グループ

電子顕微鏡による接着界面の実空間3次元解析

接着界面には分子レベルからミクロンレベルの様々なスケールの構造が含まれる[1]。接着メカニズムを理解するためには、界面構造を可視化し、さらに、界面の破壊現象を精密に解析する必要がある。本グループでは、走査型透過電子顕微鏡(STEM)[2]を中心に、接着界面の実空間3次元構造を可視化し、さらにEELS(Electron Energy Loss spectroscopy)、EDX(Energy Dispersive X-ray spectrometry)による局所分析により界面の分子相互作用を明らかにすることを目的とする。図は、アルミ(Al)と無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPgMA)の接着において、Al側とPP側の破断面をレプリカ-TEM-トモグラフィーにより3次元解析した事例であり、Al表面にはナノフィブリル、PP表面には結晶ラメラの変形を捕らえることが可能となった[3]。この様な解析により、Al表面でのPPgMAの化学反応がどのように接着に寄与しているかを明らかにした。

関連論文

  1. Lyu, L.; Ohnuma, Y.; Shigemoto, Y.; Hanada, T.; Fukada, T.; Akiyama, H.; Terasaki, N.; Horiuchi, S. Toughness and Durability of Interfaces in Dissimilar Adhesive Joints of Aluminum and Carbon-Fiber-Reinforced Thermoplastics. Langmuir 2020, 36, 14046-14057.
  2. 堀内伸, 電子顕微鏡による接着界面の可視化と解析,日本接着学会誌, 55(10), 374-382, 2019.
  3. Liu, Y.; Shigemoto, Y.; Hanada, T.; Miyamae, T.; Kawasaki, K.; Horiuchi, S. Role of Chemical Functionality in the Adhesion of Aluminum and Isotactic Polypropylene. ACS. Appl. Mater. Interfaces 2021, 13, 11497-11506.

竹中 幹人 グループ

エポキシ樹脂におけるナノスケール構造の不均一性評価

中角X線散乱法とコンピュータトモグラフィー法を組み合わせたMAXS-CT法により、接着剤のナノスケール構造の不均一性評価を実現するため、SPring-8のBL05XUにてMAXS-CTが測定可能なシステムを構築した。試料として、硬化温度と時間により、架橋条件が異なる二種類の硬化処理を施したエポキシ試料を貼り合わせた試料を作製し、MAXS-CTにより測定した。その結果、各条件に対応する領域で異なる強度を観察した。 本研究結果から、硬化条件を変えることによる架橋構造の量の差が各分布状態の差として観察できることを明らかにした。

関連論文

  1. Aoki, H.; Ogawa, H.; Takenaka, M. Neutron Reflectometry Tomography for Imaging and Depth Structure Analysis of Thin Films with In-Plane Inhomogeneity. Langmuir 2021, 37, 196-203.

小椎尾 謙 グループ

シングルラップジョイント試料の接着特性とその場分子鎖凝集構造解析

ポリウレタンを用いてステンレス基板同士を接着した単純重ね合わせ継手(SLJ)試料について、引張せん断変形過程におけるミクロ相分離構造変化を、放射光μビーム小角X線散乱(SAXS)を用いて種々の位置で評価した結果、接着剤層の端部では、中心部に比べ、より大きな分子鎖凝集構造変化を伴うことを明らかにした。
接着剤/被着体界面の相互作用力と接着強度の関係を解明するため、(カテコール/エポキシ)接着剤の主要成分であるイガイの接着足糸先端のジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)の軟X線分光顕微鏡による分布状態評価[1]、(有機化クレイ/エポキシ)接着剤の凝集構造と接着特性の関係解明[2]を行った。

関連論文

  1. Higaki, Y.; Kamitani, K.; Ohigashi, T.; Hayakawa, T.; Takahara, A. Exploring Mesoscopic Morphology in Mussel Adhesive Proteins by Soft X-ray Spectromicroscopy. Biomacromolecules 2021, 22, 1256–1260.
  2. Chu, C.-W.; Zhang, Y.; Obayashi, K.; Kojio, K.; Takahara, A. Single-Lap Joints Bonded with Epoxy Nanocomposite Adhesives: Effect of Organoclay Reinforcement on Adhesion and Fatigue Behaviors. ACS Appl. Polym. Mater. Submitted.

小林 卓哉 グループ

接着界面のマクロスケール解析

フィラー / マトリックスからなる接着界面のマルチスケール解析手法の開発を目的として、硬化度など化学的な因子の影響を含む力学シミュレーションの手法を開発した。下図は、母材破壊と界面はく離を伴うCFRPのマクロスケール解析の例である。母材破壊には、モデル内を任意にき裂進展できるXFEMの手法を採用した。負荷による初期き裂の発生と、その後のき裂進展の挙動を表現できる。また界面はく離のモデル化には、Cohesive Zone Model (CZM)を採用した。はく離を発生させる最大応力と、はく離の進展に必要なエネルギーを表現することができる。下図の例では、モデル左端で発生した初期き裂が母材内を進展し、フィラーにアレストされる挙動を見ることができる。今後、実用的なツールとして提供することを可能にするため、市場に展開されている汎用有限要素法ソフトウェアを適用した検討の成果である。

吉澤 一成 グループ

エポキシ樹脂と金表面間における接着/水和表面におけるエポキシ樹脂の接着相互作用

硬化剤を含むエポキシ樹脂と金表面との系について、第一原理分子動力学計算および最小エネルギー経路計算により、シアノ基の被覆率を変えた金表面において、エポキシ樹脂の接着強度を調べた。中程度の被覆率(33%)が、エポキシ樹脂と表面での接着力が最大となる被覆率であることを特定した[1]。
エポキシ樹脂と水和表面との系について、軌道相互作用エネルギー解析により、エポキシ樹脂と水和表面の間に働く接着相互作用を評価した。水和表面では、ベンゼン環と表面水酸基の間のOH-π相互作用が大きな接着相互作用を示し、水素結合だけでなくOH-π相互作用も接着力の起源の一つであることを明らかにした[2]。

関連論文

  1. Tsuji, Y.; Baba, T.; Tsurumi, N.; Murata, H.; Masago, M.; Yoshizawa, K. Theoretical Study on the Adhesion Interaction between Epoxy Resin Including Curing Agent and Plated Gold Surface. Langmuir 2021, 37, 3982-3995.
  2. Nakamura, S.; Tsuji, Y.; Yoshizawa, K. Role of Hydrogen-Bonding and OH−π Interactions in the Adhesion of Epoxy Resin on Hydrophilic Surfaces. ACS omega 2020, 5, 26211–26219.

 


数理統計・マテリアルズインフォマティクスグループ

久池井 茂 グループ

機械学習モデル精度向上による最適な配合の提案

連携企業に提供いただいた、規格化された複数ポリマー配合および物性データから、任意の物性予測を行うモデルを構築し、モデル精度の向上および逆解析によるポリマー配合の提案を実施した。回帰モデル構築手法やチューニングでの精度向上も実現したが、いくつかの物性には通常の回帰モデルでは予測精度が上がらないものが存在した。そこで、提供データの特性を考慮した回帰手法を提案し、NNでの精度向上を実現した。この手法は同様の特性を持つデータセットへの展開が期待できる。

廣瀬 慧 グループ

欠損データに対する多変量スパース推定に基づく統計モデルの構築

材料科学の分野において、実験データは次の傾向を持つことが多い:(1)目的変数(出力)が複数ある(データが多変量)、(2)欠損を多く含む。接着材料の物性を予測・理解するために、これらの特徴を持つデータに対する予測モデルの構築が重要であると考えた。そこで、多変量回帰分析、スパース推定、欠損データ解析の手法を組む合わせることで、欠損を含むデータに対する多変量重回帰モデル(Sparse Multivariate Regression for Missing data, SMRM)の構築を行った[1] 。一般に、変数が多くなると、推定が安定して行えなくなるという難点があるが、スパース推定の手法を組み込むことで、安定した解析が可能となる。さらに、我々の提案モデルは、欠損率が高くても適切にパラメータ推定を行って補完できるという特徴を備えている。この手法を実データに適用したところ,従来のスパース推定よりも予測精度が向上することを確認した。本手法は、今後、材料科学分野に対して寄与すると期待される。

関連論文

  1. Teramoto, K.; Hirose, K. Sparse multivariate regression with missing values and its application to the prediction of material properties. Preprint (arXiv) 2021, 18pp.

 


分子接着技術グループ

横澤 勉 グループ

耐熱性ポリアミド接着剤の開発 / PET表面におけるエステル交換反応

N-H 芳香族ポリアミドは、高分子間および被着体との多点水素結合によって接着の耐熱性と強度を上げられることが期待できる。しかし、ポリアミドの溶解性が低いことから N-保護基芳香族ポリアミドを合成し、熱酸発生剤 (TAG) とともに用いた。その結果、接着面におけるN-H 芳香族ポリアミドの生成によってガラス基板が接着できた。

アルコキシド触媒によってエステル間の交換反応が低分子だけではなく、高分子でも容易に起こることを見出したので [1]、PETとアルコキシド触媒を含むポリ(1,12-ドデシル-2,6-ピリジンジカルボキシレート) (PDP) を貼り合わせて加熱した結果、SFG スペクトルから界面で共重合体が生成していることが示唆された。

関連論文

  1. Katoh, T.; Ogawa, M.; Ohta, Y.; Yokozawa, T. Synthesis of polyester by means of polycondensation of diol ester and dicarboxylic acid ester through ester-ester exchange reaction. J. Polym. Sci. 2021, Early View.

伊藤 耕三 グループ

ポリロタキサンを用いた高分子材料の強靭化

本年度は、エポキシ樹脂中に均一分散したポリロタキサンの分子ダイナミクスに関する解析を実施した。動的粘弾性測定、パルスNMRから、ポリロタキサン添加エポキシ樹脂において、ポリロタキサンの軸高分子(PEG)の運動に起因する緩和が現れることを確認した。さらに、エポキシ樹脂にポリロタキサンを添加し、新たな緩和機構を導入することで、強靭性を向上させることが可能であることを見出した [1]。

関連論文

  1. Hanafusa, A.; Ando, S.; Ozawa, S.; Ito, M.; Hasegawa, R.; Mayumi, K .; Ito, K. Viscoelastic Relaxation Attributed to the Molecular Dynamics of Polyrotaxane Confined in an Epoxy Resin Network. Polym. J. 2020, 52, 1211-21.

大塚 英幸 グループ

自己修復性の分子骨格を利用した革新的接着技術の開発

穏和な加熱により交換反応が進行し、自己修復性分子骨格として機能するビス(ヒンダードアミノ)ジスルフィド(BiTEMPS)を高分子側鎖に導入したポリマーを合成した。加熱によってBiTEMPS骨格の交換反応が進行することで架橋反応が進行し、高分子物性が大きく変化することを明らかにした[1]。また、エポキシ樹脂中のジエタノールアミン骨格とフェニルボロン酸との特異的な化学反応を利用して、エポキシ樹脂とフェニルボロン酸骨格を有する高分子との接着能が向上することを見出した[2] 。組み換え可能な共有結合を利用することで、自己修復性高分子の開発や異種高分子の接着、さらには高付加価値高分子材料の設計に展開できることを体系的に示した[3]。

関連論文

  1. Kataoka, S.; Tsuruoka, A.; Aoki. D.; Otsuka, H. Fast and Reversible Cross-Linking Reactions of Thermoresponsive Polymers Based on Dynamic Dialkylaminodisulfide Exchange. ACS Appl. Polym. Mater. 2021. 3, 888-895.
  2. Ito, Y.; Aoki, D.; Otsuka, H. Functionalization of Amine-cured Epoxy Resins by Boronic Acids Based on Dynamic Dioxazaborocane Formation. Polym. Chem. 2020, 11, 5356-5364.
  3. 大塚英幸, 青木大輔, 庄田靖宏, 角田克彦, 動的共有結合化学を利用した自己修復性高分子および新規高付加価値ウレタン含有ジエン系ゴム材料の設計, 日本ゴム協会誌, 2021, 94, 33-38.

佐藤 絵理子 グループ

接着時の高強度化と界面剥離による解体を目指した新規易解体性接着材料の設計

従来の易解体性接着材料の課題であった接着時の高強度化と界面剥離による解体の達成を目指し、主に2つのアプローチにより新規易解体性接着材料の設計と開発を行った[1]。熱的に脱架橋可能な架橋高分子に熱膨張性マイクロカプセル(MC)を添加することにより、接着時は架橋密度が高く、加熱解体時は架橋密度の低下によってMCが効果的に膨張し解体可能であることを明らかにした(図1)。また、従来型の分解性を有する架橋高分子を利用する易解体性接着材料に対し、解体条件下で分解しない反応性高分子を精密合成し易解体性接着材料として用いることで、高い接着強度と界面剥離による解体を両立できることを見いだした(図2)[2]。

関連論文

  1. 高分子反応制御に基づく易解体性接着材料の高性能化, 日本接着学会東北支部講演会2020-2,招待講演, 佐藤絵理子, 2021年1月15日. 高強度・界面剥離型の易解体性接着材料設計, 20-2高分子学会講演会, 招待講演, 佐藤絵理子,2021年2月5日.など
  2. 高分子学会広報委員会パブリシティ賞, 2020年5月12日.化学工業日報(2020年5月27日5面)で紹介など

佐藤 浩太郎 グループ

機能性接着剤に向けた官能基含有植物由来モノマーの重合反応に関する研究

植物由来桂皮酸誘導体から接着機能が期待されるカテコール基などをもつスチレン系モノマーへスケールアップにも対応できる合成手法を明らかにした[1]。このような手法は種々の官能基をもつバイオベース経皮酸誘導体へ適用可能であることがわかった[2] 。特にカテコール基をもつ保護されたビニルカテコールモノマーについて、そのリビング重合を達成するとともに、既存の接着剤のベースポリマーであるアクリル酸エステルとの共重合性についても明らかにつつある。さらに、種々のバイオベースモノマーの精密重合を検討するとともに[3] 、機能性官能基をもつ天然由来モノマーの精密高分子合成によりバイオベース化された革新的なスマート接着技術を構築することを目的とします。

関連論文

  1. Takeshima, H.; Satoh, K.; Kamigaito, M. Scalable Synthesis of Bio-Based Functional Styrene: Protected Vinyl Catechol from Caffeic Acid and Controlled Radical and Anionic Polymerizations Thereof. ACS Sustainable Chem. Eng. 2018, 6, 13681-13686.
  2. Takeshima, H.; Satoh, K.; Kamigaito, M. Bio‐based Vinylphenol Family: Synthesis via Decarboxylation of Naturally Occurring Cinnamic Acids and Living Radical Polymerization for Functionalized Polystyrenes. J. Polym. Sci., 2020, 58, 91-100.
  3. Nishida, T.; Satoh, K.; Nagano, S.; Seki, T.; Tamura, M.; Li, Y.; Tomishige, K.; Kamigaito M. Bio-Based Cycloolefin Polymers: Carvone-Derived Cyclic Conjugated Diene with Reactive exo-Methylene Group for Regioselective and Stereospecific Living Cationic Polymerization. ACS Macro Lett. 2020, 9, 1178-118.
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